いつの間にか父が珈琲を飲む喫茶店になってしまった私の家

半年くらい前、知人のお葬式に参列した時、お香典を渡すとその場で返礼品を頂きました。家に帰ってから中身を見ると、ドリップタイプの珈琲の詰め合わせでしたが、私はどちらかというと紅茶の方が好きで珈琲は滅多に自宅で飲まないので、そのままキッチンの角の引き出しに入れたままになっていました。
そんな中、すっかり秋めいて温かい飲み物が飲みたくなって来た頃に、たまたま実家の父が母と喧嘩をして私の家に逃げて来た事がありました。大喧嘩して家を出て来たものの、もう高齢な父はこれといって行く所もなく、外は寒くて風邪を引きそうだったので、私の家に来て休憩させてくれないか…という事でした。
せっかくの休日の思いがけない来客でしたが、私は仕方ないなぁ〜と父を家に上げて話を聞く事にしました。その日も気温が低くひんやりしていたので、何か温かい飲み物を出そうと思い、日本茶・紅茶・珈琲のどれが良いか父に聞きました。すると、申し訳なさそうに「何でも良いけど…」と言いながら、父は珈琲が良いと嬉しそうに答えました。
私は、半年前のドリップタイプの珈琲を父に飲ませ、役に立ったな〜と思っていました。母も珈琲は全く飲まない人ですし、1人で喫茶店やカフェに行く様な父ではないので、久し振りに珈琲が飲めて嬉しかったのでしょう。「あぁ美味しい!」と、とても幸せそうな顔で笑った父が印象的でした。
夫婦喧嘩の詳細を聞いてから、父はしばらくして帰って行きましたが、その後ろ姿が小さく見えて、思わず「珈琲くらいまた飲みに来たらいいよ〜」と声をかけました。すると、それから父は時々ピンポーンと本当に私の家に珈琲を飲みに来る様になってしまったのです。どんどん返礼品の珈琲は減っていき、とうとう私は、父用の珈琲を買い置きするはめになりました。
それでも、美味しい美味しいと嬉しそうな顔をして珈琲を飲みに来る父を追い返す訳にもいかず、どうぞもう喫茶店だと思ってちょうだい!と、父が来る度に苦笑いしている私です。ミュゼ 100円 ネット限定